(写真:株式会社 コー・ワークス CTO 白田 正樹さん)

今年の春から新型コロナウイルスの感染拡大がクラスターとなり、世界中で脅威をもたらしています。手洗いやうがい、マスクの着用など、日々気をつけている方が多いかと思います。

6月からは外出自粛が解禁され、リモート勤務で無くなった方や飲食店へ出かける方も多くなったのではないでしょうか。特に、アルコール消毒や体温測定はオフィスや飲食店でも促進されていますが、徹底する難しさを感じることがあります。

IoTを活用した「課題の解決」「商品・サービスの開発」などを行う、「株式会社 コー・ワークス」では、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策ができるシステムを作った方がいるのだとか!

このシステムの名称はOTAM (オタム)。One-push alcohol and Thermo detective Authentication Machine(ワンプッシュ・アルコール・アンド・サーモ・ディテクティブ・オーセンティケーション・マシン)の頭文字を取って命名されました。

今回、システムを開発された白田 正樹(しらた まさき)さんにお話を伺ってきました。

―まず、白田さんは普段、どんなお仕事をされているのですか?

技術系の責任者をしています。主に、ハードウエアのシステム開発を担当しています。IT企業で取り扱うようなパソコンのソフトウエアではなく、ドアの入退室システムなど機械を制御するシステムの開発を行っています。また、「Tibbo-Pi(ティーボパイ)」の開発を行ってきました。ちなみに、「IoT」とは何か分かりますか?

―えっと、すみません。実はよく分かりません(笑)。ぜひ、教えてください。

数年前から「IoT」という言葉が普及し始めましたが、なかなか浸透していません。ITはアプリやパソコンのソフトのような、ソフトウエアだけで完結していたのですが、IoTは何かしらの情報を収集してインターネットを介してモノに繋がっていきます。「Internet of things」という「モノをインターネットで繋ぎますよ」という意味なんです。明確な定義はありませんが、私はそんな風に理解しています。

モノとインターネットを繋ごうとすると、どうしても電子回路やセンサーのようなハードウエアの要素が必要になります。さらに、インターネットをつなぐためのソフトウエアが必要。従来のITはソフトウエアだけでほぼ完結していました。しかし、IoTはソフトウエアとハードウエアの知識が必要になりますし、インターネットを繋ぐネットワークの知識も必要になるので、ITよりも幅広い知識が必要になるのです。その結果、なかなか両方できる人がいなくて進んでいかないというのが現状です。

そんなIoTの垣根を低くするのが、「Tibbo-Pi」なんです。

なるほど! では、「Tibbo-Pi」について、ぜひ説明をお願いします。

本来なら、回路をはんだ付けして基盤を作ると思うのですが、「Tibbo-Pi」はこんな風にブロックをはめ込むだけでハードウエアの構築が簡単にできます。

また、ソフトウエアもプログラミング言語を書かなくても良いような、Node-REDという開発ツールを使います。この開発画面もプログラミング言語にすると、こんな感じで知識がないと何が書いてあるか分からないですよね。

ハードが得意な人は比較的簡単にソフトを開発できて、ソフトが得意な人は逆になります。ですので、「Tibbo-Pi」はIoTを促進させるためのツールという位置付けなのです。

「Tibbo-Pi」はブロックをはめ込めば、基盤ができる
左が「Tibbo-Pi」の開発画面、プログラム言語にすると右のようになる

―では、今回「体温測定&アルコール消毒徹底 入退室システム(仮)」を開発された経緯は何だったのでしょうか

そもそも、去年の夏に入退室のシステムを作ったのが始まりです。既存のメーカー製品を使っていたのですが、古くなっていたので新しく「Tibbo-Pi」を利用して自作し、オフィスで使用していました。社員証をかざすと鍵が開いて入室できる、よくある装置です。

それから今年の3月頃に新型コロナウイルスの感染拡大がニュースになり、手を消毒しないとオフィスの中に入れないシステムを追加しました。その後、6月に仕事の気分転換のために、体温を測定して37.5度以上あると入室できないシステムを追加しました。

入り口の様子
裏側の社員証を読み取るところのそばにTibbo-Piを発見!

―開発の時間はどのくらいかかったのですか?

それぞれ1〜2時間くらいですかね。

―そんなに短時間で作れるなんて、すごいですね! 会社から依頼されたわけではなく、ご自身で作ろうと思いついたのですか?

そうですね、特に依頼されたわけではないです。一人で趣味のような感じで、「こんなシステムがあったらいいな」と思って機能を追加しました。

―開発されたシステムについて、詳しく説明していただけますか?

現在、5つの機能を搭載しています。

①RFIDカード:カードをかざすと、社員IDを読み取りドアの鍵が開くようになっています。社員IDを入退室の時間が記録されます。

②BLEボタン:ボタン式になっていて、押すとBluetooth(ブルートゥース)で信号が送られるようになっています。消毒のプッシュする部分に逆さにつけていて、消毒をしていないとスピーカーで消毒をするように注意され、オフィスの鍵は空きません。

③サーモセンサー:体温を測るセンサーです。37.5度以上の場合は鍵が開かないように設定しています。体温は人がいなくても1秒に10回の頻度で常に測っていて、入室の時に記録されるようになっています。

④スピーカー:消毒されていなかったり、体温が高かったりしたら、「消毒してください」というエラーを通知してくれます。

⑤Tibbo-Pi:それぞれのシステムの情報を集め、判断や記録をする役割をしています。

システムの仕組み

―開発時に工夫されたところはあるんですか?

仕組みをどうするか、というところです。テレビでよく観るような、空港でのサーモグラフィーの装置は何百万円もする高価なものなので、アイデアでもっと費用を抑えようと思いました。

消毒をしたかどうかはBLEボタンを逆さに付ければ良いとか、スピーカーも100円均一で売っているものを使うとか、そんな風に身近にあるものとの組み合わせを考えながら作っていきました。

蓋のところに逆さにボタンがついている。 ケースもレーザーカッターで自作。

―今後の展望や目標があれば教えてください。

このシステムは、「Tibbo-Pi」でできることのほんの一例にすぎません。できれば、自分で組み立ててみて、DIYをするような感覚で楽しんでIoTの開発をしてほしいです。そのために、今回のコードを公開してみるのも良いかもしれないですね。もっとIoTの開発ができる人口の底上げを促進していくことに繋がれば、嬉しいです。

また、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、もっと機能を追加してグレードアップしていきたいです。

気分転換でシステム開発を行ってしまう白田さん。工夫をすることを楽しんで開発をしてい姿が印象的でした。今後、入退室システムがどのように進化していくのか、とても楽しみです。